【通りすがりの短編小説】オークス

異形の化け物たちが迫りくる。”私”は唯一の武器である剣を構えて化け物たちに立ち向かう。間合いを見計らって剣を振ると、切れ味鋭く化け物たちを切り裂いた。異形の化け物たちは人とは異なる青い血を切り口から吹き出しながら倒れていく。だがいくら切っても異形の化け物の数はなかなか減らない。異形の化け物からの攻撃もすべて避けきることは難しく”私”も徐々にダメージが溜まっていく。

横でその様子を見ていた和也は「魔法を使って一掃するんだ」と叫んでいた。

「わかっているよ」と煩そうに返事をする和生は手に持ったスマホを忙しなく操作し続けている。

スマホの画面から光が溢れ出した。和生が魔法を使ったのだ。

「よし、いいぞ」

和也がスマホを覗き込みながらそう言った時、菜生を寝かせにいっていた伽耶がいつの間にか戻ってきて二人の後ろに立っているのに和也は気づいた。まずいと思ったがもう遅い。

「ちょっと、あなた、和生にこんな変なゲームやらせないでよ」

案の定、その口調は普段のおっとりとしたものとは異なる強いものだった。

「ごめん、和生が少しだけやらせてほしいと言うから」

和生はそんな伽耶の声が聞こえないほど夢中でゲームをやっているが、そのスマホを問答無用で伽耶は取り上げた。

「ちょっと、いいところなのに」

不満そうに母親である伽耶に文句を言うが、「誰がゲームやっていいって言ったの」と一喝されて、一転して怯えるような顔をして和也に助けを求める視線を送ってきた。

だが和也はそんな和生の気持ちを無視して「だからもう止めろって言っただろう」と伽耶に同調して和生を叱った。

伽耶は和生から取り上げだスマホを和也に差し出した。それを黙って受け取る和也に不満そうな顔を向ける。

「そもそもなんでこんなゲーム、あなたのスマホに入っているの。前に子供たちに悪影響だからこういうゲームはやらないでってお願いしたはずだけど」

伽耶からの冷たい視線に耐えきれず和生のほうを見るが、さきほど裏切られた和生からも同じように冷たい視線が向けられていた。

伽耶の機嫌が悪いときは、どんな無駄な抵抗をしてもいい結果に繋がらないことは今までの経験から和也にはわかっていた。

苦笑いを浮かべて「どうも、すみませんでした」と素直に謝った。

 

和生が部屋に眠りに行って、リビングには和也と伽耶の二人になっていた。

少し気まずい思いで居心地の悪さを覚えていた和也だったが、伽耶はいつもと同じ様子で和也に聞いてきた。

「明日、空港には何時に行くの」

伽耶の機嫌が直っていることに和也はホッとした。

「達哉の飛行機が到着するのが11時って言っていたから、それまでには着くように行こうと思うよ」

達哉とは和也の2つ年の離れた従兄弟だ。今は仕事の関係で沖縄に住んでいるが、明日こっちに遊びにくることになっている。今年の正月は仕事の都合で達哉は帰ってこれなかったから、1年以上会っていない。明日は土曜日で和也も仕事が休みだから空港まで迎えに行くことになっている。

「夜はうちでご飯食べるんだよね」伽耶が子供たちが散らかしたところを片付けながら和也のほうを見た。

「そうだな。達哉は独身で外食ばかりで家庭の味に飢えているはずだからな」

すると伽耶の表情が少し曇る。

「そう言われるとプレッシャーなんだけどな」

「大丈夫、あいつは昔から何を食べてもおいしいと言うから、そんなに重く考えなくてもいいよ」

すると、伽耶は再び機嫌の悪い顔になってしまった。

「私が作る料理がおいしくないみたいな言い方ね」

和也は瞬時に余計なことを言ったと理解し、しまったと思ったが、言ってしまったものはもはやどうにもならない。

「いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだけどな」

和也は何とか言い訳を言おうとするが、伽耶はそんな和也の横を通り抜けて、「もう寝ます」と一言だけ言って部屋を出て行ってしまった。

和也は今日はなんかうまくいかない日だと頭を右手で搔きむしった。

 

「ご馳走になったうえにホテルまで送ってもらって申し訳ないね」

助手席に座る達哉は全然申し訳なさそうな顔をしているので、和也は苦笑いした。

「別に構わないよ、ホテルもそんなに遠くではないし」

信号が青に変わったのを確認してアクセルに乗せた右足に力を込める。土曜の夜のため道は空いている。この分ならあと10分もあれば目的地のホテルに着くはずだ。

「和さん、気のせいかもしれないけど、伽耶さんとケンカしてる」

和也は突然そう言われ、動揺してしまい言葉が出てこなかった。

その様子を見た達哉はニヤニヤとした笑い顔になった。

「図星だったかな」

「いや、ケンカというわけじゃなくて、、、ただ伽耶が一方的に怒っているというか」

和也は昨夜あったことを達哉に話した。

「なるほど、火に油を注いじゃったか」

「そうなんだよ。たぶん、普段なら聞き流せるようなことだったのかも知れないけど、マズいタイミングで余計なことを言ったもんだよ、我ながら」

そう言ってハンドルから片手を離して頭をガシガシと掻く和也を見て、達哉は申し訳なさそうな声になった。

「なんか、そんなときに悪かったね。しかも原因は俺にありそうだし」

「別にお前が原因じゃないから気にすることはないよ。それに伽耶は怒りが持続しないタイプで明日にはきっと機嫌が直っているはずだから大丈夫だよ」

「ならいいけどね」

まだ心配そうな顔をしている達哉に和也は笑いかけた。

「明日は菜生のピアノの発表会だから、さすがに機嫌悪いことはないよ」

「そういえばさっきもそんな話してたね」

「ほんとは明日もお前に付き合ってやりたいんだけど。悪いな」

達哉は明日東京競馬場に行くのが目的で、今回東京に来ていた。達哉も和也に負けないくらい競馬好きだ。

「俺より菜生ちゃんのピアノのほうが絶対に大事だ。それに元々競馬場は1人で行く予定だったから大丈夫だよ。競馬の生観戦なんて久しぶりなのに、それがオークスなんて楽しみだよ」

「もうオークスか。月日の経つのはほんと早いね」

「なんか和さん言うことがおじさんくさくなってない」

「もう立派なおじさんだからいいだろ。それよりオークスは何を買うのか決めてるのか」

達哉は後部座席に置いてあった自分のカバンを引き寄せ、中から嬉しそうに新聞を取り出した。

「実は一頭狙っている馬がいるんだよね」

「おっ、どの馬だ」

ちょうど信号が赤だったので車を停止させ、達哉の持つ新聞を覗き込む。

すると一頭の馬の名前に赤丸が付けられているのが見えた。

 

"コガネノソラ"

 

「黄金の空、いい名前だよね。もしこれがゴールドスカイだったら何とも思わなかったかもしれない」

「たしかにそうだな」和也は納得できるとばかりに首肯した。

「良かったら和さんの分も買おうか」

和也は今度は首を横に振った。

「あれ、言ってなかったか。俺、今馬券は買わないことにしてるんだよ」

達哉は意外そうな反応をしている。

「へぇ~そうなんだ、どうして買わないの」

「まあいろいろあってね、ただ馬券は買わないけど予想だけはしてるよ」

達哉は首を傾げながら笑った。

「予想してるのに馬券買わなくて、それって楽しいの」

和也はその言葉を聞いて苦笑した。

「この話すると必ずそう言われるよ」

 

 

 

 

【通りすがりの競馬予想】平安ステークス

どうも、通りすがりです。

 

かなり以前のことですが、私はひと時血統にかなりハマっていたことがあります。

血統の本を読み漁り、当時は現役馬の血統をそらで言えるくらいでした。

ただ、それはあまり長続きしませんでした。なぜならば、その努力が馬券という結果にまったく繋がらなかったからです。ですので、今では馬券を検討する際に血統はあまり重視はせずに、悩んだ際の補足くらいの感じで捉えてます。

ですが、今でも馬の血統表を見るのは好きです。何気なく見た血統表に知った名前を見つけると嬉しくなるからです。これは長く競馬を続けてきた特典だと思うのですが、同じような方も少なくないと思います。

先日大井記念の予想を書かせてもらった記事で、注目馬として本命予想したサヨノネイチヤもその一頭です。

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サヨノネイチヤの血統表を見てもらうと、3代母にウラカワミユキという馬がいます。ウラカワミユキと言えばブロンズコレクターとして有名な希代の名馬、ナイスネイチャの母です。あのナイスネイチャの血縁から、今後の活躍が期待される馬が出てきたことに嬉しくなります。

今後もこのような楽しみを持って競馬を見ていければと思います。

 

前置きが長くなりましたが、平安ステークスの予想となります。

jra.jp

◎5.ハギノアレグリアス

○2.ミトノオー

▲11.ゼットリアン

×7.ミッキーヌチバナ

△8.スレイマン

△15.ヴィクティファルス

△16.バハルダール

☆14.オーロイプラータ

 

本命はハギノアレグリアスです。去年のこのレースで2着した後はG1では4着、6着と馬券には絡めませんでしたが、それ以外で出走した重賞ではすべて3着以内と堅実な成績です。ここも勝ちきれるイメージはあまりありませんが、引き続き大きく負けることもないかと思います。

対抗はミトノオーです。今回初めての関西圏の競馬場でのレースで、その点は少し不安ですが、前走のマーチステークスは負けて強しの内容でしたので、ここも引き続き好調維持ならば、十分勝ち負けできると思います。

穴として狙いたいのはゼットリアンです。OP入り後は今一つの成績ですが、レース内容はそれほど悪くはないので、流れ一つで上位に食い込んできてもおかしくないと思います。人気はないので、狙ってみるのも面白いと思います。

 

人気が割れているように、全体的に実力拮抗していると思います。実際に予想しているときもなかなか絞れずに非常に苦労しました。正直あまり自信がありませんが、この予想で勝負したいと思います。

 

【通りすがりの思い出語り】オークス

どうも、通りすがりです。

 

今ではダービー最多勝利となる6勝を記録している武豊騎手ですが、1996年当時はまだダービーを勝ったことがありませんでした。ですがそんな中、武豊騎手がついにダービージョッキーになるのではないかと思わせる馬が現れました。

その馬とははダンスインザダークです。

全姉にオークス馬のダンスパートナー、そして長距離重賞で活躍したエアダブリンを半兄に持つダンスインザダークは、弥生賞を制し主役の一頭としてクラシック初戦の皐月賞を迎えます。ただ残念なことに熱発を発症して直前に皐月賞は回避。その後、ダービートライアルのプリンシパルステークスを使ってダービーへと向かいます。

ダービーを万全の状態で迎えたダンスインザダークは直線では早くも先頭に躍り出て、そのまま押し切るかと思われましたが、一貫歩づつ差を詰めてきてゴール前にダンスインザダークを差し切った馬がいました。それは音速の貴公子と呼ばれたフサイチコンコルドでした。あと少しのところで武豊騎手の悲願のダービー制覇は夢と消え去ってしまったのです。

実は勝ったフサイチコンコルドも、ダービー前に出走を予定していたプリンシパルステークスを熱発で回避していました。

そんな熱発がブーム(?)の中で、この春のクラシックを熱発で回避していたもう一頭の馬がいました。

それはエアグルーヴです。

3歳時(現2歳)に出走したいちょうステークスで絶望的な不利を受けたのにも関わらず、それでも勝利した衝撃的なレースで能力の高さを見せていたエアグルーヴは、年明けのチューリップ賞で3歳女王のビワハイジを退け、断然の主役として桜花賞を迎えようとしていました。

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ただ桜花賞の数日前に熱発してしまい、無念の回避となってしまいました。

その後順調に回復し、そして迎えたのがオークスです。

桜花賞の回避からこのオークスはより負けられない一戦となりました。ライバルとしてはエアグルーヴ不在の桜花賞を勝利したファイトガリバーなどがいましたが、レースでは危なげない内容でファイトガリバーを抑え快勝し、見事にオークス馬となりました。

 

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エアグルーヴの母のダイナカールもオークスを制していたため、母娘制覇の偉業達成でもありました。

そんなエアグルーヴの物語はここでは終わりません。寧ろここから始まったと言ってもいいでしょう。

最近では牝馬が2000m以上の混合のG1で勝利するのは珍しくありませんが、当時はそのような馬はほとんどいませんでした。

ニシノフラワーやダイイチルビー、ノースフライトなど混合のG1を勝つ牝馬もいましたが、全てがマイル以下の距離によるものです。

エアグルーヴは古馬になってからも現役を続け、牡馬相手に中距離でのレースへ出走し、互角以上のレースを続けることになります。

特に1997年の天皇賞秋では、バブルガムフェローなどのG1馬を相手に見事な勝利をおさめ、牡馬も含めた中でもトップクラスの一頭と認識されるまでなりました。

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ちなみに牝馬による天皇賞の制覇はプリティキャストが勝った天皇賞から17年ぶりとなります。

天皇賞の勝利後はG1での勝利はありませんでしたが、宝塚記念や有馬記念での3着、ジャパンカップの2着などの成績をおさめました。

その後、1998年の有馬記念の5着を最後に引退し繁殖入りしましたが、繁殖入り後もアドマイヤグルーヴやルーラーシップなどの数々の名馬をターフに送り続けました。

牝系はまだまだ続いているので、いつかまたこのファミリーからとんでもない大物が生まれるかもしれません。

サンデーサイレンスの登場が日本競馬を世界に近づけたというふうに言われることがありますが、私はこのエアグルーヴの天皇賞秋の勝利こそが日本競馬が世界へと近づくエポックメイキングな出来事であったと思っています。

 

【通りすがりの競馬予想】大井記念

どうも、通りすがりです。

 

今日は大井競馬場で大井記念が行われます。

最近一部の競馬ファンの間で注目のサヨノネイチヤが出走していますので予想をしてみました。

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◎1.サヨノネイチヤ

○7.セイカメテオポリス

△2.バーデンヴァイラー

△3.ミヤギザオウ

 

本命は注目のサヨノネイチャです。

現在6連勝中で、デビュー以来3着以下なしの戦績は文句なしです。ここも突破出来れば帝王賞に向けて楽しみな一頭になると思います。期待を過分に含んだ本命です。

対抗はセイカメテオポリスです。

このコースでは実績十分で近走見ても衰えは感じられません。中央勢がいないここは負けられない一戦でしょう。

この2頭から実績ある△2頭へ流したいと思います。

 

3連複1,7から流し

買い目2点

 

【通りすがりの競馬予想】2024/0508/0511/0512結果

どうも、通りすがりです。

 

今週はさっそく馬券予想の結果です。

 

・エンプレス杯予想

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結果:的中

購入点数:6点 600円

払い戻し:4130円

収支:+3530円

 

【短評】

勝ったオーサムリザルトについては、レース前は私は正直半信半疑という感じでしたが、レース内容は逃げから押し切る形での勝利で、非常に強いものでした。

今後はダート牝馬路線をいくのかダート混合戦へといくのかわかりませんが、どちらに行くにしろ期待できるのではないかと思います。

2着には私の本命のグランブリッジが入りました。やはりこの距離では安定した走りだと思いましたが、現状では勝ち馬とは着差以上に力差があるかなという印象です。

3着には人気薄のキャリックアリードが入りました。近走冴えずに人気がありませんでしたが乗り方ひとつでこのくらいは走れるだけの力があったということでしょう。御神本騎手はこれがあるから侮れません。

 

・京王杯スプリングカップ予想

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結果:外れ

購入点数:21点 2100円

払い戻し:0円

収支:-2100円

 

【短評】

本命のリュミエールノワルは5着。とくに不利もなく、想定した感じのレース内容でしたが、最後は伸びきれませんでした。残念ながら現状でのこの馬の能力通りの結果かもしれません。

1着~3着に入った馬は3頭とも印を付けていましたので、軸選びに失敗しました。少し狙いすぎたかもしれません。

 

・ヴィクトリアマイル予想

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結果:外れ

購入点数:21点 2100円

払い戻し:0円

収支:-2100円

 

【短評】

大変失礼な言い方ですが、本当にまさかまさかの結果でした。テンハッピーローズが勝つなんてこれっぽっちも思っていなかったので、寧ろ清々しいくらいの負けです。

ただ、あえて言えば、波乱の匂いがするという予想(?)だけは当たっていたのが個人的には救いになりました。

 

・WIN5予想

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結果:外れ

購入点数:24点 2400円

払い戻し:0円

収支:-2400

 

【短評】

5レース中、的中は1レースと散々な結果でした。ただ今週は荒れすぎで、本命よりの私の予想では出番がまったくありませんでした。

しかし、ヴィクトリアマイルが終わった際に、今週のWIN5の的中は0票かと思いましたが、1票だけ当たりがあったことには驚きました。どうやったらあの馬券が買えるのか、的中した方に是非教えていただきたいです。

 

今週はエンプレス杯以外はすべて外れとなりました。今週は軸選びに失敗した感じが敗因かと思っています。来週に向けてそのあたりを修正して、まずは確実に軸を取れるようにしていければと思います。

 

お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

【通りすがりの競馬予想】20240512_WIN5

どうも、通りすがりです。

 

WIN5の予想をしっかりとやればやるほど、買目が本命サイドばかりの馬になってしまうのは必然というものなのでしょうか。WIN5対象のレースが全レース本命サイドで決着することもないですが、その場合配当はたいして期待できなくなってしまいます。

本命サイドからも穴サイドからも万遍なく選べるようになれることが理想なのですが。

WIN5予想の壁は想像以上に高いかもしれません。

 

では、ここから今週のWIN5予想となります。

 

錦ステークス(京都10R 芝1600m)

3.アイスグリーン

 

ウオッカカップ(東京10R ダート1600m)

6.メイショウラナキラ

10.ロミオボス

 

弥彦ステークス(新潟11R 芝1800m)

3.ケイアイセナ

5.セレシオン

9.タガノエスコート

 

栗東ステークス(京都11R ダート1400m)

2.サンライズフレイム

7.ペースセッティング

 

ヴィクトリアマイル(東京11R 芝1600m)

5.ウンブライル

10.ナミュール

 

冒頭でも書いたように本命サイドの予想になってしまったため極力買目を絞りました。

さて、今週は何レース的中するでしょうか。

とりあえず最低ラインと考えている3レースは的中するといいのですが。

 

買目点数 24点

 

【通りすがりの短編小説】ヴィクトリアマイル

「未来から来ただって?」

和也は思わず大きな声を出してしまった。

ハッとして、とっさに周囲を見渡してしまったが、店内には和也とマスターの2人しかいなかった。

「ええ、先週くらいからここ数日、何度かお越しになられてたのですが、先日来られた際にここだけの話ということでコッソリと教えてくださいました」

初老のマスターは抑揚のない淡々とした話し方で、さも普通のことのように話す。

「いやいやいや、そんなの嘘でしょう」

和也は酒が入ってはいるが、さすがにそんな話は鵜呑みにできない。

「私も最初は面白い冗談だと聞いておりましたが、詳しく聞くと意外と説得力がございまして」

もしこれが、他の人の話ならば和也は少しも信じる気にはならなかったと思うが、このマスターが言うならばもしかしたらという気もしてくる。

和也がこのカウンター席しかない狭いBARに偶に来るようになったのは一年程前だった。

自宅からの最寄駅前にある商店街の一角にある雑居ビル、その地下にこの店はあった。

偶々入った店だったが、聞き上手なマスターとの会話が楽しく、また趣味も合ったため何度も通うようになっていた。

そしてマスターと接しているうちに、その誠実な人柄にいつしか信頼を寄せるようになり、他では言えないような愚痴なんかも話せるような関係性になっていた。

それにしても、と思う。

この店はマスターの大らかな性格のためか、以前から変わった客が多い。

いつも決まった酒を一杯だけ注文し、それを一気飲みしてすぐに帰る男。

鏡を持ってきて、鏡の中の自分に話しかけながら酒を飲む女性。

和也は最初そのような客を見て驚きを隠せなかったが、そのような他の店では嫌がられそうな客でもこの店は受け入れてくれる。

それはマスターの優しさなのだと思うが、やはりそのような客の存在を変に思う客も少なくないと思う。この店の客がいつも少ないのはそのせいではないかと和也は思っている。

マスターはそんな状況でもいつも平然とした様子だが、一度、こんな客ばかり大丈夫なのかと、余計なお世話とは知りつつ、それとなく聞いてみたことがあった。

すると「この店は私が趣味でやっている店でございます。私はどのようなお客様でも大歓迎です」とさらりと答えた。

以前、別の常連客と話をしたときに聞いた話では、マスターの奥方は都内でクラブを経営している実業家らしい。ならば趣味というのも概ね間違いないのだとは思う。

それならばそれで和也が気にすることではないが、それにしても今度は未来人か。

「その未来人はどんな感じの人だったの」

記憶を探るようにマスターは普段から細い目をさらに細めた。

「その方は男性で年は30歳前後くらいでしょうか。ご本人が言うには今から25年後の未来からタイムスリップをして来たと言っておられたと思います。具体的にどのような方法でタイムスリップをしたかは秘密だそうです。」

「秘密ねぇ、なんで秘密なんだろう」

「タイムスリップの方法は未来の日本で発見されたらしいです。ただ、まだテスト段階のようで、その方がタイムスリップをしたことがある3人目とのことでした。誰でもかれでもタイムスリップするとどんなことが起こるかわからないため、タイムスリップの技術は厳重に管理されており、未来ではまだ一般には公表されていないそうです」

「そうなんだ。でも、そんな重大な秘密をマスターにはあっさりと話たってこと?」

マスターは薄っすらと笑みを浮かべた。

「そうなのです。私もまったく同じことを思いましたので、お聞きしたのですが、そうしたらこれは一つの実験のようです」

「実験?」

和也はグラスに入った水割りを飲み干し、そのグラスを置くとすぐにマスターがグラスに氷と酒を継ぎ足す。

「ええ、過去の人間との関わりを持つことで、どれだけ未来に影響が出るかを観察するとかで」

「未来に影響、、、う〜ん」

並々と注がれた水割りに再び口をつける。酒による酔いが思考をぼやかす。

「このあたりは私も難しくて理解できなかったのですが、簡単に言うと、未来は常に一定ではなく、不確定要素によってさまざまに未来が分岐するそうです。ですので、過去で変化を起こすことで、その未来から来られた方がいる未来と、今のこの世界の未来は別のものになるようなのです」

和也は急に頭の中に一つのワードが浮かんできた。

パラレルワールドか」

「そうです、それです。あの方もそのようにおっしゃっておられました」

「だから私が未来に起こることを教えてほしいと聞いてみたのですが、その方が居た未来に起こっていることが、この世界の未来に必ず起こるわけではないからと断られてしまいました」

和也はうんうんと首肯した。

和也はそこまで聞いて、一つの結論が出ていた。

「なかなか巧妙な話だったけど、そういうことならば結局その男が未来から来たことは何一つ証明することができないということでしょう。マスターも乗せられちゃいましたね」

マスターは変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。

「やはりそう思われますか」

「そう思いますよ。そもそもその男はなんでそのような重大な話を、わざわざこんなところに来てするのでしょうか、、、」

そこまで言ってから「あっ、、すみません、こんなところなんて言って」と慌てて訂正をした。

だがマスターは気にしていない様子で表情を変えることもなくいった。

「どうもその未来から来られた方はここで会いたい人がおられたようです。でも残念ながら結局会うことはできなかったみたいです」

和也はマスターの言い方が気になった。

「さっきから過去形で話をしているけど、もしかしてその男はもうこの店には来ないの」

「ええ、昨日も来られていたのですが、その際に、もう未来へ帰るとおっしゃっておられました」

和也は酒で少し赤くなった顔を、残念そうに歪めた。

「なんだ、俺も一度会ってみたかったな」

「でも一つだけ置き土産をいただきました」

そう言って、カウンターの裏から何かを取り出してテーブルの上に置いた。

それは競馬新聞だった。

「未来から来られた方が、いろいろ話を聞いてもらったお礼に一つだけ未来のことで知りたいことを教えていただけるとのことだったので、今週の日曜日に行われるヴィクトリアマイルの勝ち馬を教えてくださるようお願いいたしました」

和也は少し身を乗り出してマスターを見た。

「おっ、さすがマスターだね。それは今この瞬間の競馬ファンが一番興味があることだからね」

「未来から来られた方は、競馬はあまり詳しくないと言われておりましたが、お調べいただけるとのことで、その結果を昨日来られた際に教えていただきました」

「で、どの馬が勝つって言っていたの」

マスターは競馬新聞を広げて、ヴィクトリアマイルの出馬表を和也に見せた。

そこには一頭の馬の名前に黒いボールペンで丸く印が付けられていた。

 

"ナミュール"

 

マスターは自身の服の胸ポケットから千円札を出して新聞のうえに置いた。

「この千円でこの馬の単勝を買うつもりです」

和也は、グラスに残っていた水割りを一口飲んで、口から少しこぼれた酒を手の甲で拭った。

「でもさっきの話だと、もし外れたら、マスターに教えたから未来が変わったとか言いそうだけどね」

すると、マスターは今日一番の笑顔を浮かべた。

「そのために馬券を買うんですよ」

和也は「なるほど」と言い、やはりこのマスターは優しい人なのだとあらためて思っていた。

おそらくこの馬券は当たっても外れても、この未来から来た男がまた来るまではずっとこの店にあり続けるのだろう。

 

 

 

【通りすがりの競馬予想】ヴィクトリアマイル

どうも、通りすがりです。

 

今回のヴィクトリアマイル、正直なところナミュールが断然の人気かと思っていたのですが、前日発売のオッズではマスクトディーヴァと人気を二分する形となっています。モレイラ騎手ということもあると思いますが、ゲートに不安のあるマスクトディーヴァナミュール迫る人気があるのが正直疑問に感じます。何やら波乱の匂いがしてきます。

 

では、ヴィクトリアマイルの予想となります。

 

◎5.ウンブライル

〇2.フィアスプライド

▲10.ナミュール

×7.ハーパー

△4.コンクシェル

△13.モリアーナ

△14.フィールシンパシー

☆6.マスクトディーヴァ

 

本命はウンブライルです。休養明けとなった東京新聞杯は9着と大敗しましたが、一走叩かれて馬体が絞れた前走の阪神牝馬ステークスではメンバー中最速タイの32.9の上りで2着と復調してきました。

3歳時にNHKマイルカップ2着とG1でもすでに実績があるうえに、ステルヴィオの全妹という血統背景からもこの距離がベストと思えるだけに、ここでも十分勝ち負けできるだけの能力があると思います。前週にこのレースと同コースのNHKマイルカップを制している川田騎手が鞍上というのも心強いです。

対抗はフィアスプライドです。前走の中山牝馬ステークスは9着と大敗してしまいましたが、敗因は馬場が合わなかったことに尽きると思います。パンパンの良馬場ならばもっとやれていいはずです。今までのレースからも距離も1800よりは1600mのほうがいいように思えます。また、ここ2走で手綱を取っているルメール騎手が引き続き乗れることはこの馬にとっては大きなプラスでしょう。

 

ナミュールは、海外からの帰国後初のレースということに加えて、初コンビとなる武豊騎手が鞍上ということで、不安材料がないわけではないと思います。これでそれほど人気がなければまだ狙って面白いと思いますが、人気のここはあえて少し評価を下げてみました。

マスクトディーヴァは思い切って馬券の買目から外そうかと思いましたが、今回の鞍上も前走も乗っていたモレイラ騎手ということで、押さえで残すことにします。

 

3連複5の一頭軸流し

買目 計21点

 

【通りすがりの競馬予想】京王杯スプリングカップ

どうも、通りすがりです。

 

sp.jra.jp

 

最近、土日は外出していることが多いので、上記のアプリを使ってリアルタイムでレースを観戦することがあるのですが、以前まではスマホでリアルタイムでレースを見ようと思うとグリーンチャンネルなどの有料会員にならなければならなかったことを考えると、素晴らしいアプリだなと思います。

ただ若干使いづらい部分もある(レース動画を全画面表示にするためには、スマホの設定で画面の回転ロックを解除しなければならない)ので、もっと機能が充実してくることを期待しています。

 

では、京王杯スプリングカップの予想となります。

jra.jp

 

◎2.リュミエールノワル

○1.トウシンマカオ

▲8.アネゴハダ

×15.ウインマーベル

△3.ソーヴァリアント

△11.スズハローム

△14.バルサムノート

☆4.レッドモンレーヴ

 

本命はリュミエールノワルです。1勝クラスからの3連勝でOP入りと、今勢いがある一頭ですが、レース内容も前走では外枠から好位につけて直線では早めに先頭に並びかけるも、後ろの馬が追い付いてくるのを待ってから追い出し、ゴールまで脚色鈍らずにしっかりと凌ぎ切った勝ち方には着差以上の強さを感じました。

G2のここは相手がかなり強化されますが、近走冴えない成績の馬が多い中で未知の魅力に賭けてみるのも面白いと思います。

対抗はトウシンマカオです。前走の高松宮記念での私の本命でしたが、馬場が合わなかったのか6着と残念な結果となってしまいました。ただその前の2走の重賞での走りは、間違いなく競走馬としてのピークを感じるだけに、1走だけの凡走で見限ってしまうことはできません。距離も溜めが効く府中の1400mならばギリギリ持ってくれると思います。

穴としては、アネゴハダを推したいと思います。前走の3勝クラスの勝ち方もうまくインを掬っての勝利と、能力的には重賞のここではどうかというところもありますが、距離とコースともにこの馬にとってベストなだけに、人気がないのであれば狙ってみるのも面白いかと思います。あと個人的には府中の重賞で人気のない馬にのった三浦騎手はときどき穴をあける騎手としていつも押さえているだけに、ここでも狙いたいというところもあります。

 

3連複2の一頭軸流し

買目 計21点

 

【通りすがりの思い出語り】ヴィクトリアマイル

どうも、通りすがりです。

 

先日のボクシングの世界タイトルマッチ、井上尚弥vsネリをご覧になりましたでしょうか。

私はそこまでコアなボクシングファンではありませんが、井上尚弥の試合に関しては欠かさず見てきました。結果はご存じの通り井上尚弥の見事なKO勝利となりましたが、試合を通してなによりも驚いたのが、今までダウンをしたことがなかった井上尚弥がダウンをしたことです。その衝撃的なシーンは"まさか"を予感せずにはいられませんでした。結果的に、その予感は杞憂に終わり良かったのですが、何事にも絶対はないということをあらためて感じさせられました。

 

過去に競馬でも”まさか”というレース結果が少なからずありました。

ぱっと思いつくだけでも、天皇賞春でのオルフェーブル、同じく天皇賞春でのゴールドシップ宝塚記念でのキタサンブラックスプリンターズステークスでのタイキシャトル京都大賞典でのスペシャルウィーク、などなど。

恐らく調べれば他にもたくさんあると思います。

そんな中、とくに印象に残った”まさか”のレースとして、2019年の有馬記念でのアーモンドアイがあります。

単勝1.5倍の圧倒的一番人気でしたが、レースでは4コーナーですでに手応え怪しく、直線でもまったく伸びずに9着と信じられない大敗を喫してしまいました。

今までのレースから考えれば、実に”まさか”の結果でした。

凡走の原因として、香港のレースへの出走を取り消し後の急遽の出走となったことがありましたが、それにしても現役最強馬の惨敗には衝撃を受けたものです。

 

そして、その有馬記念敗退後、休養を挟んで出走してきたのが2020年のヴィクトリアマイルになります。

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大敗後のレースということもありましたが、相手関係はそれほど強敵という馬もおらず単勝1.4倍の圧倒的1番人気でした。レースでも直線で馬なりで馬群の外につけると、軽く仕掛けるだけであとは追うこともなく馬なりのままで4馬身差をつけてゴール、まさに圧勝という内容でした。

アーモンドアイはその後もGⅠ勝利を重ねて歴代最多のGⅠ9勝というとてつもない記録を残してターフを去りましたが、9つのGⅠ勝利も1つの大敗も全てが記憶に残る真の名馬でありました。

そんなアーモンドアイの初子のアロンズロッドは順調にいけば今年デビューとなるはずです。どんな走りを見せてくれるのか今から楽しみですね。